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47エッセイコラム

五感で感じるエッセイ『イン・ラケ’ッチ!』  白川ゆり

7、さあ、ここから始めよう 〜 SPRING HAS COME 〜
桜春。うきうきする。

それは、単に気候が暖かくなるからだけではない。
草木が芽吹き、動物たちが目を覚ます。
自然の胎動を、無意識のうちに心と体が感じ取っているからだ。
古代マヤでは、そんな動植物の息吹を実感する春分が新年だった。ここ日本でも、春に「新年度」が始まる。

人形町春と言えば、やっぱり桜。

お花見の風習が、一般的に庶民に広まったのは江戸時代の中期。
そこで、江戸の香りをほのかに残す人形町にやって来た。その名の通り、この町は、かつて人形師など人形にまつわる人々がたくさん住んでいたという。現在でも、有名な人形作家、辻村寿三郎氏のアトリエがある。

桜の花でピンク色に染まる人形町通り。この界隈には、行列のできる鯛焼き屋さんや親子丼の有名店など、老舗の名店が軒を連ねている。「花より団子」というわけで、その中から3軒のどら焼き屋さんを訪ねてみた。

まず向かったのは、日比谷線人形町駅A1出口を出てすぐ、甘酒横町の入口にある「玉英堂」。看板の金文字がまぶしい。
このお店では「どら焼き」を「虎家喜」(とらやき)と呼ぶ。皮の焼き目がまだら模様についていて、パンケーキのようにふわっとしている。「どら焼き=ぺったんこ」のイメージを覆し、真横から見ると、「皮」「餡」「皮」がはっきり独立していて、「バーガー」のようだ。大粒のあずきがぎっしり詰まった餡は、甘さ控えめ。ふわっとした皮とマッチして、2つくらいペロッといけそうである。

どら焼き2軒目は、浅草線人形町駅A5出口からほど近い「清寿軒」。平日の午前中に売り切れるという幻のどら焼き「大判」「小判」をGET。餡がずっしりと入っていて重い。その武骨な迫力に圧倒される。機械を使わず、手作りにこだわった職人の技と心意気がたっぷりと練り込まれているのだ。

どちらの店も、創業は江戸時代。

そして3軒目。現在建て替え中の水天宮の斜向かい、「三原堂本店」。こちらでは、季節限定の「さくらどら焼き」を頂く。定番のキツネ色の皮に、花の焼印が押されている。その中に、桜の葉を練り込んだ白餡がそっと挟みこまれ、一口食べると「おお」と声が出る。塩気のある甘さと桜の香り。そう、桜餅のあの味だ。こちらもあっさりしていて、パクパク食べられる。

江戸開府とともに整備された人形町は、上方からたくさんの人や文化が流れて来た。朝は魚河岸、昼は歌舞伎、夜は吉原に人が集まり、『三千両の落ち処』とうたわれた。
長い乱世が終わり、誰もが待ち望んだ天下泰平の世。さあ、ここから新しく始めようという江戸の人々の希望と覚悟が、今もこの町のエネルギーとして、静かに息づいている。

何か新しい事を始めたくなる春。さあ、ここから始めよう。
この町が、そっと背中を押してくれるかも知れない。

それにしても、あ〜、喰った喰った。お腹はすでに春爛漫なのだ〜。


※記事の内容は平成27年3月時点のものです。

 

[白川ゆり プロフィール]
日本大学芸術学部映画学科を経て、WALT DISENY WORLD EPCOT−CENTER JAPAN PAVILIONトラディショナル・ダンサーオーディションでグランプリを受賞、渡米。帰国後、演劇ユニット「プロジェクト・ミッション」を結成。1998年、シアタートラムにおいて、旗揚げ公演「HANDS」を上演。以後、ほぼ全作品の企画・脚本・演出・出演を務める。 FMラジオ 『10NIGHTS STORIES』、ニッポン放送『Bitter Sweet Café』、ネット配信ドラマ等の脚本を担当。また2012年より、マヤ叡智教導委員として活動。古代文明の教えを次世代に継承することを目的に、ワークショップ等を開催している。

 



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