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47エッセイコラム

静寂の理由   −ノルウェー−   古野直子

ノルウェー

”自然の沈黙”
景色をそんな風に感じたのはこれが初めてのことだった。一昨年の夏行ったノルウェーのソグネフィヨルド。それは旅行前のイメージとは少し違っていた。

風景”フィヨルド観光の北欧ツアー”にはそのツアー代金の高さからなかなか手が届きませんでした。他の国へ旅行した時に、添乗員さんや行った経験のある方に値段を聞くとお二方とも40万円位と答えました。半ば諦めていたのですが去年新聞広告で見つけました。ぐーっと安いものを。早速旅行会社に申し込みの連絡をしました。

北欧と言えば、”風光明媚で物価が高い。”と多くの人が認識していると思いますが飛行機で首都オスロに着くとすぐに物価高の洗礼を受けました。ツアーのお仲間が空港で買った500mlのミネラルウォーター1本が日本円で500円也。(まあ空港で買えば高いのは当然なのですが)空港で出迎えて下さった日本人の現地ガイドさん曰く「物価の高い北欧の中でもノルウェーは頭1つ抜けて高いです。」「でもそこに住んでいるのでしょ?」という私の問いに「あ、はい。」そんな会話でこの旅は始まりました。景色の美しさの洗礼は明日に控えてオスロ到着の日はフィヨルドクルーズの拠点、ベルゲンに1泊しました。

さて次の朝を迎えました。ホテルの前で出発を待っているバスの運転手さんに私は英語で気になる今日の天気を尋ねました。「そんな事わからないよ〜。」そう、現地ガイドさんによるとノルウェーの天気は移ろいやすく気まぐれで予想がつかないらしい。バスでホテルから走行すること20、30分位でフロムに到着しました。山間に鉄道駅やチケット売り場があり大きな客船が湾に停泊しています。ここは写真でもよく紹介されているのでご存知の方も多いのではないでしょうか。フィヨルドクルーズは先の”大きな客船でするものかと思っていた。”が、添乗員さんに我々ツアー客は奥の方に誘導されました。行った先では定員20名位かと思われるボートが私達を迎えてくれました。少し拍子抜けしましたが、さあいよいよこれから旅のメインイベント、フィヨルドクルーズの始まりです。

ボートが進んで程無くするとそこは…何故かしら、中国を想わせるような様相でした。(私は中国に行ったことはないのですが。) 深い緑の山々とそれが映った湾の水面。フィヨルドとは「内陸部に深く入り込んだ湾」を意味します。けれどそれは湾というより湖のように静かです。空には黒い雲とその奥には白い雲が互い違いに存在し、その合間から太陽の強い光が射し込む。そして霧がもうっと立ちこめていてここがノルウェーだということを忘れてしまうほどです。時折山肌に滝が流れています。2股3股に分かれたその様子は岩清水のようでもあり言葉の選択に戸惑います。何千年いや何万年、或いはもっと前からずうっと存在し続けた自然。人間に侵されなかった姿。そんな壮大な景色の中に身を置くとある疑問が頭を過ります。”この山々は何か言いたいことがあるのかしら? それとも何もないのか。湾の静かな水面は怒っているの? それとも何も感じていないの?”その答えが見付からないまま終えたクルーズでした。

”あの時私は大きな自然に抱かれた。”ボートのゆりかごに身を置いて霧という毛布を掛けられて。ゆらゆら揺られ目を閉じることなく母なる山々や雲を見つめ続けました。答えがないのにそれをねだる駄々っ子のような目をして。結局自然の表情からは何も読み取れませんでした。音が聞こえないというだけで無く景観さえも静かでした。穏やかな湾は何故かしら私の心を揺さぶりました。

ゆらゆら揺られて、眠りに就くには惜しかったあのひととき。目は開いていたけれど心や頭は母なる自然の洗礼を受けて穏やかでした。自然はきっと.語りたかったわけではない。怒っていたわけでもない。ただゆらゆら私をあやしていてくれていたのです。
”答えは必要ない”と。




【古野直子 プロフィール】
横浜生まれ横浜育ち。結婚後10年以上夫の転勤で愛知県豊田市に居住。2011年に横浜に戻る。趣味は旅行。これまでの旅で印象深いのは、岡山の大原美術館、海外ではスペイン、ロシア。

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